多くの方にとって、住宅診断(ホームインスペクション)を利用する機会はそう多くありません。そのため、住宅診断会社を選ぶのも簡単ではありませんし、そもそも何を基準として判断すればよいのかわかりづらいのではないでしょうか。この数年で急激に増えた業者のなかから、失敗しないための住宅診断会社選びのポイントをあげてみます。
1.第三者であること
住宅診断(ホームインスペクション)と第三者性が重要な関係にあることは、住宅診断(ホームインスペクション)の第三者性と業界の問題点でも述べている通りです。ここは本当に重視しなくてはならない最低限の条件です。
2.不動産会社やリフォーム会社でないこと
自称第三者も横行しつつあり注意が必要です。不動産の販売やリフォームの受注は住宅診断(ホームインスペクション)で得られる報酬の数十倍かそれ以上になることも多いものです。ちょっとした診断結果の表現の調整だけで利益の差が大きいことを体感してしまうと、100%消費者のためにアドバイスすることは難しいでしょう。
体制・システムで第三者性をしっかり維持するためにも、住宅診断会社が不動産業やリフォーム業を兼業していないか、関連会社で営業していないか確認しましょう。会社や団体の名称を変えて不動産会社などと提携し、消費者には第三者を語っている業者もあるので要注意です。
3.建築士の資格を持っている人が担当すること
資格については、住宅診断を行う人はどんな人?(関連資格と信頼性)でも述べておりますが、一番安心できるものは建築士です。なかには、建築士事務所の登録をしている会社が、建築士の資格をもたない人に担当させることもありますので、担当者が建築士の資格を持っているかどうかも確認しておきましょう。
また、一級建築士事務所の登録をしているものの、診断の担当者は一級建築士ではなく二級建築士ということもありますので、担当者個人の資格について確認しておいた方が良いでしょう。なお、建築士資格が必要ないとの意見もありますが、建築物を診断していく上では建築基準法などの関連法規の知識や建築確認申請の手続き等で得る経験が必要となるシーンが多いため、これらの知識・経験のためには建築士の資格は必要でしょう。
4.経験・実績があること
どのような仕事でもそうですが、住宅診断(ホームインスペクション)においても経験や実績は大事です。しかし、実は住宅診断(ホームインスペクション)の経験だけを積んでいてもあまり意味がありません。その前に基礎となる経験(設計や工事監理など)の経験を十分に積んでいる必要性があります。
例えば、商業施設や官庁の施設ばかり経験してきた方が住宅の設計・監理の経験もなく、住宅診断を何百件もやっても基礎経験の不足です。なかには、モデルルームの工事や内装設備の工事、店舗設計などの経験はあるものの住宅の設計・監理の経験が十分になく、住宅診断(ホームインスペクション)の経験だけ積んでいくケースもありますが、これは危険です。
基礎となる経験がなく、住宅診断(ホームインスペクション)だけをやっていって能力が備わるほど甘い仕事ではありません。確認したい経験は、住宅診断(ホームインスペクション)のほか、「住宅」の設計・工事監理の経験です。ちなみに、マンションの内覧会立会いの経験を多く積んでも一戸建ての住宅診断には役立ちませんので、内覧会の経験が多いというのは除外しても良いでしょう。
5.最低でも5人以上(できれば10人以上)の組織で意見交換していること
住宅診断(ホームインスペクション)は真面目な小さな設計事務所が行っていることもあります。その担当者が建築士であり、住宅の設計・監理の経験も十分に積んでいるならば良いかもしれません。ただ、この場合に注意しなければならないのが、診断結果・判断・調査手法・調査範囲などがひとりよがりになっていないかどうかです。
まだまだ住宅診断(ホームインスペクション)という業務の歴史は浅く、確立された業務ではありません。実績・経験のある会社がノウハウを急激に積みあげてきていることは明白ですが、少人数の組織では組織の実績が不足しがちです。
そして、何よりも問題なのは何らかの事象・問題点に対する判断において、誤ってしまうリスクが高まります。いくら個人での経験が豊富であっても、それはその個人が経験できた範囲に限られます。それは実は大した範囲の経験でないことも多いです。
また、自分自身が設計監理、工事した物件と他人がそれらをした物件は異なるため、他人が建てた住宅の診断には幅広い意見が必須です。多くの仲間がいれば、不明点や初めて見た事象換などについて意見交することもできますし、その情報を共有することもできます。思い込みによる判断ミスは怖いものです。
少なくとも5人以上、できれば10人以上の組織で意見交換・情報共有しながら、運営していることも住宅診断会社選びの大事なポイントです。
6.適切な価格設定であること
住宅診断(ホームインスペクション)をそれだけの能力を有し、丁寧に対応するとなれば、そのコストは小さくありません。しかも、不動産会社やリフォーム会社と提携もせずに純粋な形で営業するには、それなりの価格設定になるものです。相場感は基本的な調査範囲ならば、5~7万円程度、調査範囲を広げて詳細に調査するならば10~15万程度です。これよりも安い住宅診断には要注意です(但しコストの多くが人件費が占めるため地域差もある)。
また、住宅診断会社にとって最大のコストは人件費(担当者の報酬)です。飛びぬけて多くの割合を占めるコストなのですが、価格を大きく下げて営業することは、担当者の報酬が極端に少ないことを意味します。そして、技術者の能力と報酬は比例しますから、「格安業者=能力に不安」ということが考えられます。せっかく代金を支払って診断してもらうのであれば、それなりの報酬を支払って能力・経験のある人や会社に依頼すべきでしょう。
7.コミュニケーションができること
住宅診断(ホームインスペクション)の技術や知識だけが全てではありません。診断結果やアドバイス内容をできる限りわかりやすい言葉で伝えることも重要です。コミュニケーション能力のない方は避けるようにしましょう。