徐々に利用が増えてきた住宅診断(ホームインスペクション)ですが、この1~2年の普及スピードはそれ以前よりも随分早いものです。おそらく2017年はさらに早く普及することになるでしょう。
住宅診断が普及するにつれて、1つの興味深い現象も出てきました。まだまだ少ないケースですが、今後はこういった事例も増えてくるでしょう。それは、同じ物件に対して2回以上の住宅診断(ホームインスペクション)が実施されるというものです。
買主による住宅診断が増え続けている
冒頭にも記載致しましたが、住宅診断(ホームインスペクション)の利用件数は急速に増えており、住宅購入時には多くの人が利用するようになってきました。その利用の多くが、買主が依頼するものです。
購入しようとする住宅の瑕疵や劣化具合を可能な範囲で把握し、それを住宅購入判断に活かしたいというニーズが強いからです。今後は、不動産会社から買主に対して住宅診断というサービスについて説明しなければならなくなるため、より一層利用されることになります。
売主による住宅診断も増えつつある
実は、買主が住宅診断を利用するだけではなく、売主も利用しようと考える人が増えてきています。買主が購入判断のために必要としているならば、売主が実施しておくことで買主の安心感を高めることができ、自宅の売却に有利ではないかと考える人が出てきているからです。
不動産会社から住宅診断というサービスを説明しなければならなくなるのは、買主に対してのみではなく、売主に対しても同じです。ですから、売主も積極的に住宅診断(ホームインスペクション)を利用しようと考える人が増えていきます。
売主の住宅診断への信頼性
ただ、買主と売主の考えや意識は異なります。買主は購入判断のために、その住宅の正確な情報を知りたいわけです。住宅診断を行った人から、悪いところは悪いとはっきり言ってほしいのは当然のことです。
一方で売主は売るために住宅診断を利用しようと考えているため、悪い情報をあまり積極的に開示したいわけではありません。何か瑕疵や不具合などがあって、それを黙っていると取引した後で問題化(トラブル化)する可能性があるのですが、それ以前に売れなくなっても困ります。
住宅診断を希望する売主から、「診断で悪い箇所が見つかったら、嘘を書いてほしいとは言わないが、その項目自体を削除してもらえないか?」と聞かれたことがあります。驚くような話ですが、売主の本音がわかる事例です。もちろん、丁重にお断り致しました。
売却を依頼された不動産会社としても、その物件に瑕疵が見つかれば売りづらくなり、売れなければ仲介手数料を得られないため、瑕疵があっては困ります。過去に、何度も不動産会社から、瑕疵についての表現がどのようになるか、診断する前に問合せがありました。売主側にとって優しい表現にしてくれる住宅診断会社を探しているようですが、ひどいのですね。
売主と買主が同じ物件に住宅診断を入れることがある
売主による住宅診断(ホームインスペクション)の普及も悪くないと考えますが、個別に見ていくと信頼できないひどいものもあり、買主はこれを警戒して売主や不動産会社による住宅診断の結果を信じないことも多いです。
買主としては心配であるために、売主が住宅診断している物件に対して、自分でも別の会社に住宅診断を依頼して実行するケースが出てきたのです。同じ物件に対する2重の住宅診断ということです。
新築住宅では2重、3重に検査されている
前述したことは中古住宅のことですが、新築住宅では2重の検査は当たり前で、物件によっては3重になっているものも少なくありません。
建築確認制度による検査、瑕疵保険の検査、性能評価の検査、フラット35の検査、買主による検査などがあり、2重、3重が当たり前になっています。新築の場合は、買主が物件価格に含む形で費用負担するものですから、無駄な費用との見方もあります。
中古住宅でも、売主側と買主側の住宅診断でわかれていく時代がやってくるかもしれません。
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