気に入った中古住宅を購入しようとしたときに、買主が第三者の住宅診断(ホームインスペクション)を利用しようとすると、不動産仲介業者からこう言われることがあります。
「当社が契約している住宅診断会社で既に住宅診断してもらっていて、保証も付いているから大丈夫」
「こちらで住宅診断会社に依頼して、自社保証もつけるから大丈夫」
不動産会社の費用負担で診断をしており、尚且つ保証まで付いているのであれば、確かに自分で第三者に依頼する必要はないと考えるかもしれません。ここで、本当に不動産会社が主導する住宅診断やその保証があれば安心なのかどうか、よく検討しなければなりません。
ちなみに、不動産会社の保証が付いているケースは、一部で見られることであり、一般的なことではありません。これがないからといって、不動産会社のサービスの質が劣るというわけではないです。
1.不動産仲介業者が委託している住宅診断は調査項目が限定的なことが多い
不動産会社が主導する住宅診断では、調査項目が限定的である場合が多いです。多くの場合、保証をセットとしていますが、保証と関連する部分のみを診断し、結果を出すため、調査項目が限定的になりやすいのです。そのため、対象を把握するためには保証内容・項目の確認が大事だと言えます。
2.保証内容・項目を確認すべき
不動産会社の保証があるから大丈夫なのかを判断するためには、その保証内容・保証項目をきちんと確認しておく必要があります。保証の対象項目は、一般的な瑕疵担保責任の対象項目と一致させていることが多いです。具体的には、主要構造部(木部の腐食)、雨漏り、シロアリ被害、給排水管の故障です。
これらは、そもそも売買の条件で売主の瑕疵担保責任をつけてもらえば同じ内容のものとなりますが、それと保証の大きな相違点は期間です。
中古住宅の売主が不動産会社である場合は、引渡しから2年間の瑕疵担保責任が付いているはずですから、期間はないのですが、不動産会社以外が売主の物件である場合は、引渡しから3カ月以内の期間であることが一般的です。
不動産会社の保証がある場合は、2年程度の期間を設定していることが多いため、有利な条件ですね。また、設備についても保証の対象となっていることがあります。これも有利な条件だと言えます。
3. 保証と関係ない箇所のアドバイスも重要
中古住宅を購入するとき、重要なチェックポイントは保証の対象となっているような項目だけではありません。たとえば、基礎のひび割れが見つかったとき、それが保証を受けられるレベルかどうかは判定されますが、保証を受けられるとしても長持ちさせるために早めに補修すべき症状なのか、もしくは保証されないけれども適切な補修をすれば安心できるものかといったことは、購入判断のためにも大事な情報です。
保証できるかどうかの判定は、その後の補修の必要性には合わないことも多く、購入判断のための情報として合わないこともあるのです。
4.買主が住宅診断者(ホームインスペクター)から直接アドバイスを受けられるか
買主が自ら第三者の住宅診断を依頼することの大きなメリットの1つが、診断の担当者(ホームインスペクター等)から診断結果について現場の状況を見ながらアドバイスを受けられることです。調査報告書や保証のための検査結果を書面で見ただけではわからない生の情報を現場で得られることは購入判断のために重要なことです。
住宅診断(ホームインスペクション)を買主が利用する最大のメリットは、現場で受けられるといってよいでしょう。ですから、買主は原則として診断の現場に同行して生の情報を得るようにしましょう。
細かなニュアンスなどは、診断の担当者の口頭での説明から得られます。検査報告書や保証の可否だけを書面で見ても、誤解してしまうこともあるでしょう。
5.住宅ローン控除等に使える瑕疵保険とは異なる
中古住宅の場合、築年数・構造等の条件によっては、住宅ローン控除や登録免許税の軽減を受けるために、既存住宅瑕疵保険に加入するか、耐震診断で耐震基準の評価が求められています。しかし、不動産会社の保証サービスは、これらに該当しないためことを理解しておく必要があります。
不動産会社の保証が付いているから減税されると誤解していた人が、確定申告の段階で減税を受けられないと知ってせっかくの減税メリットをあきらめたという人もいます。
大手不動産会社などが行っている自社保証サービスは、買主にとってメリットとなる面はあるものの、本当に必要な情報を得られず、購入してから、結局、第三者に住宅診断を依頼する人もいます。できれば、購入前の段階で診断してアドバイスを得ておいた方がよいでしょう。