任意売却物件の購入と瑕疵担保免責と住宅診断

任意売却物件の購入と瑕疵担保免責と住宅診断

中古住宅の購入時に耳にすることがある任意売却や瑕疵担保責任と、これらに関係して住宅診断(ホームインスペクション)の必要性を解説します。

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1.任意売却物件とは何か

任意売却物件というものをご存知でしょうか。

漢字をそのまま受け取れば、任意で売却する物件ですから、基本的に全ての売却物件が該当しそうです。任意とは、その人の自由な意思によるということですから、この解釈であっていそうです。

しかし、不動産業界では、任意売却物件のことを少し違った意味で使っています。これは、競売物件との対比で使っている言葉です。

競売物件とは、債権者が強制的に担保物件(不動産)を処分するためにとった手段であり、所有者の意思によって行っているものではありません。いわば、債権者によって無理矢理に売られている物件です。

これに対して、任意売却物件とは、債務(借金)を清算するために担保となっている不動産を所有者(=売主)の自分自身の意思で一般的な市場に売りに出しているものです。何らかの融資の担保として自宅を抵当に入れ、その返済が滞った場合などに行われています。

ただ、任意とは言っても多くの売主はあまり自宅の売却に積極的ではありません。本当は自宅を手放したくないものの、債権者(金融機関など)の説得に応じてやむを得ず売却しようとしていることが多いです。ただ、これに限ったことではなく、返済が厳しいと判断した売主(=債務者)が売って処分しようと考え、不動産会社に売却相談をして、話を進めていることも多いです。

住宅を売却する場合、その住宅に住宅ローンなどの担保権が設定されており、融資残高が残っていることも多いものです。その場合には、売却した時に得た売却額で融資残高を返済する方法が一般的です。しかし、住宅の値下りなどにより、売却額よりも融資残高の方が多いということもよくあります。

そういったときには、売主は不足した金銭を自ら用意して支払わなければなりません。たとえば、融資残高が2,500万円で売却額が2,000万円であるならば、500万円を現金で用意しなければならないのです。

ここで融資の返済に窮している人のことを考えてください。毎月の返済をするのも厳しくて売却を考えている場合、この500万円を用意できるでしょうか。それが難しいことが容易に想像できますね。

金融機関は、返済の滞っている状況から、このまま放っておいても利息が膨らむだけであり、不良債権が解決しないのであれば、500万円を回収できなくとも2,000万円だけでも回収した方がよいだろうと判断することがあります(実際には売却に必要な諸費用分も回収できません)。

本来ならば、全額を回収したときに消すはずの抵当権を一部の融資残高が残っているにもかかわらず、抵当権の抹消に応じるというものです。

任意売却物件には、このような背景があることを理解しておく必要があります。大事なのは、売主が経済的に困窮している可能性が高いということです。

住宅診断と瑕疵担保責任

2.売主の瑕疵担保責任とは何か

次に瑕疵担保責任についてお話しします。任意売却物件と何の関係があるのかと考えるかもしれませんが、大きく関係することです。

住宅の売買における瑕疵担保責任とは、売買した目的物(住宅)に何らかの瑕疵があれば、売主が買主に対して補修等の責任を負うというものです。売主にはこの瑕疵担保責任がある場合と無い場合があります。

瑕疵担保責任の対象となる瑕疵として一般的なものは、シロアリ被害や構造木部の腐食、雨漏り、給排水管の故障があげられます。買主にとっては、これらの瑕疵について売主に責任を負ってもらった方がよいのは当然のことです。

中古住宅の売買では、売主が不動産会社で無い場合には、その物件の引渡日から1~3ヵ月の期間を定めて瑕疵担保責任を売主が負うこととする契約が多いです。引渡日から3ヵ月というのも短い期間ではありますから、買主は急ぎ瑕疵が無いか居住しながら、もしくは入居するまでに確認する必要があります。

しかし、売買によっては売主の瑕疵担保責任を免責とすることがあります。免責とは責任を免れる、つまり責任を負わないということですから、引渡し後に何か瑕疵が見つかっても売主が補修等の対応をしなくてよいことになります。

買主にとっては良い条件ではありません。但し、売買する中古住宅の建物が非常に古い場合には、建物に瑕疵がある確率が高いものであり、その分、建物価格も安く設定されていることが一般的です。ですから、築年数の古い中古住宅であるならば、売主の瑕疵担保責任を免責にすることはよくあることです。

注意したいのは、築年数が新しいのにもかかわらず、売主の瑕疵担保責任を免責とする売買です。たとえば、築5年や10年であれば免責とすることはあまりないことですが、免責とするならば買主にとって不利だと言えるでしょう。こういった条件を提示された場合、買主は瑕疵担保責任をつけて頂くよう交渉する方がよいです。

しかし、築年数が新しくともどうしても瑕疵担保責任を免責にせざるを得ない場合があります。ここで、任意売却物件が出てくるのです。前述のように任意売却物件は、売主が経済的に困窮している状況です。そのような売主が瑕疵担保責任を負ったところで、瑕疵が発見されてから補修を求めても経済的に対応ができないのです。

買主は、何かあったときには売主の瑕疵担保責任で補修対応してもらえばよいかと期待して購入をするかもしれませんが、責任の履行ができる状況になければ意味がありません。よって、任意売却物件では、瑕疵担保責任が免責となっているのです。

任意売却物件と売主の瑕疵担保責任には、こういった関係があるのです。

住宅診断と任意売却物件

3.任意売却物件と瑕疵担保責任と住宅診断の関係

最後に、任意売却物件と瑕疵担保責任と住宅診断(ホームインスペクション)の関係性についてです。ここまで読んでみれば、イメージはできているかもしれません。

売主の瑕疵担保責任が免責となっている物件ということは、何らかの瑕疵などがあれば、買主が自らの負担で補修等を行わなければなりません。築年数が浅くて建物価格もそれなりに負担して購入するにもかかわらず、売主が責任を負わないためにリスクが高い取引です。

任意売却物件は、一般的な物件と比較して相場より少し安く取引されることが多いとはいえ、買主のリスクが大きいと言えます。そこで、購入前に買主が自ら選んだ専門家に住宅診断(ホームインスペクション)をしてもらう必要性があるのです。

瑕疵担保責任が有効にある場合であっても、住宅診断(ホームインスペクション)を利用することが多いですが、瑕疵担保責任が免責となっている任意売却物件では、さらに必要性が高いと言えます。
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