中古住宅を購入するときに買主が気になることの1つは、その建物に雨漏りがないかどうかです。実は、新築住宅でも完成時から雨漏りするケースがあるのですが、建物の劣化が進んでいる中古住宅においては雨漏りリスクがより高いと言えます。
今回のコラムでは、この雨漏りと住宅診断(ホームインスペクション)の関係について書いてみます。
1.雨漏り被害は住宅の寿命を縮める
建物で雨漏りしていたとすれば、それに対して早期に適切に対処しなければ、当然のことながら建物の劣化を早めることになります。
雨に濡れた箇所が腐食したり、錆びたりして、建物の一部が弱くなっていくことがありますし、カビが繁殖して衛生的な問題が生じることもあります。気づかずに長期間、放置しておくと、壁や柱、土台などが著しく腐食してしまって構造耐力上の問題まで抱えてしまうこともあるのです。
住宅診断(ホームインスペクション)のアネストでは、15年以上も様々な住宅を見てきましたが、耐久性や構造耐力に問題があると判断した雨漏り被害のある住宅がいくつもあるのです。
2.住宅診断で雨漏りを調査するか
誰もが歓迎しない雨漏り被害ですが、住宅購入時に多くの人が利用している住宅診断によって、十分に対策をとれるのかどうか、気になるところです。中古住宅を購入するときに、第三者の専門家(通常は建築士)に診断してもらって雨漏りしていなければ、本当に大丈夫なのでしょうか。
ここでは、中古住宅の雨漏りと住宅診断の関係について説明します。
2-1.雨漏りの痕跡の有無を調査する
住宅診断において、建物の雨漏りについて調査する項目があります。しかし、その調査項目の名称は「雨漏り跡」「漏水跡」「水染み」などとなっているはずで、「雨漏りの有無」とはなっていないことが一般的です。
つまり、住宅診断では雨漏りの痕跡の有無を調査しているわけです。たとえば、リフォームなどで痕跡がわからなくなっていれば、雨漏り跡は無しという調査結果となりますが、実際には雨漏りしていることもありえるのです。
また、雨漏りしていなくとも、将来的に雨漏りが生じる可能性のある部分の劣化状況も調査しています。たとえば、外壁仕上げ材のシーリングの劣化状況はこれにあたります。シーリングが著しく劣化したからといって必ず雨漏りするわけではないですが、そのリスクは高くなります。
そういったリスクがあるならば、補修すべき項目としてアドバイスされることがあるのです。
2-2.雨漏りが現在進行形かどうか調査しない
一般的な住宅診断では、雨漏りの痕跡の有無や将来的なリスクについて、調査してアドバイスするのですが、たとえ明確な雨漏りの痕跡が見つかっても、その雨漏りが現在進行形なのか、既に補修されるなどして雨漏りが止まっているのかまで調査するものではありません。
明らかに現在進行形であることが、たまたま分かった場合にはその旨を依頼者へ報告することになりますが、基本的には進行しているのか、止まっているのかを調べているわけではないと理解しておきましょう。
2-3.雨漏りの原因や被害範囲も調査しない
さらに、住宅診断においては、雨漏りの痕跡があっても、その原因箇所を調査するものでもありません。原因箇所とは、雨が建物内部側へ浸入してきた入口・ルートのことです。例えば、バルコニーの笠木と外壁の取合い部分から雨水が浸入して階下の部屋の天井に流れてきたといったルートを調べるわけではないのです。
また、雨の流れた範囲や雨による壁や天井内部の被害状況(腐食・錆・カビなど)を調べるわけでもありません。こういったことを調べたいのであれば、住宅診断ではなく、雨漏り調査(原因や被害範囲の確認を目的とした調査)を別途で依頼する必要があります。
3.雨漏りの痕跡がある住宅を購入するときの注意点
中古住宅購入前の住宅診断によって、雨漏りの痕跡が見つかった場合、買主は同のように対処すべきなのでしょうか。
このような場面に遭遇した買主の立場としては、以下の点について確認したいところです。
- 雨漏りが現在進行形なのかどうか
- 進行形の場合、雨漏りの原因箇所はどこなのか
- 原因の解決方法(補修方法)とその対策費用
- 雨漏りの被害範囲とその補修の必要性(必要な場合の対策費用)
- 誰がこれらの費用等の負担をするか
しかし、上の5点のうち1~4を購入前に実施することは簡単ではありません。何しろ、まだ買う前であり所有者ではないために、買主都合で調査や工事ができるわけではないからです。1~4を売主にしてもらえると理想的ですが、その要望に応えてくれないケースは多いでしょう。
住宅購入前の買主がとることのできる現実的な解決方法は、雨漏りの痕跡有無を確認して痕跡があるならば、それを参考材料の1つとして購入有無を判断するという方法が最も一般的です。どうしても買いたいという想いから、売主と交渉して売主側で調査してもらうこともありますが、交渉がうまく進まないことは多いです。
これまでに見てきた事例のなかには、売主側で痕跡を認知していたので、あらかじめ原因調査をしていたというものがありました。しかし、その調査方法は稚拙なもので本当に原因と言えるのかどうか第三者としては判断できないものでした。
売主としては、売りたいわけですから、雨漏りしていることを告知はしても、あまり被害範囲が大きいことや対処が困難(大きな費用がかかる)なことを買主に知られたくないです。利害関係の違いですね。
仮に、雨漏りの痕跡がある物件を購入し、現在進行形であることが疑わしい場合は、早めに雨漏り調査をしておきたいものです。