中古住宅の建物状況調査(住宅診断・インスペクション)5つのポイント

中古住宅の建物状況調査(住宅診断・インスペクション)

中古住宅を購入するときや売却するときに利用される住宅診断(ホームインスペクション)ですが、最近では建物状況調査という言葉も聞くことが増えました。そこで、中古住宅の売主や買主が知っておくべき建物状況調査の基礎知識を特に大事な5点に絞って解説します。

住宅診断会社・ホームインスペクターの紹介

1.住宅診断(ホームインスペクション)と建物状況調査

5つのポイントを挙げる前に、住宅診断(ホームインスペクション)や建物状況調査の違いについて解説しておきます。

建物状況調査とは、後述するように国土交通省の告示で示されている基準に則って行う調査のことで、中古住宅を対象としています。

一方で住宅診断(ホームインスペクション)とはもっと広い意味で使われる言葉で、建物状況調査も該当しますが、それ以外の調査も含まれています。住宅診断(ホームインスペクション)よりも建物状況調査の方が調査内容が限定的な項目であることが多いですが、ごく一部分に限った調査(例えば基礎のみを確認する調査)であっても住宅診断と呼んでいる業者もあります。

つまり、建物状況調査は国土交通省の告示で明確に示されているもの(告示では既存住宅状況調査という)となりますが、住宅診断(ホームインスペクション)は明確でないとも言えます。それだけに、依頼者は依頼先の住宅診断(ホームインスペクション)会社が行う調査がどういった内容であるのか、調査項目や報告書のサンプルをホームページなどでよく確認しておく必要があります。

また、住宅診断(ホームインスペクション)は建物状況調査と違って新築住宅に対しても行うことが多いです。完成物件に関わらず建築中に行うものも、住宅診断(ホームインスペクション)と呼んでいることもあります。

2.建物状況調査(住宅診断・インスペクション)を抑える5つのポイント

ここでは、建物状況調査について必ず理解しておきたい大事なポイントを5つに絞って紹介します。売主であっても買主であっても知っておくべきことですから、じっくり読んでおいてください。

建物状況調査

2-1.建物状況調査は中古住宅の売買時が対象

建物状況調査は、中古住宅の売買に際して行うものです。売主が売却しようとするときに依頼して、購入検討者に安心して購入してもらうことが主な目的の1つになっています。有利に売却できることを期待しているわけですが、建物の状況を買主に知っておいてもらった方が引渡し後のトラブル抑制につながる効果も期待できます。

また、買主(購入検討者)は購入の判断材料にすることや購入後に補修すべく個所を知っておくために依頼しています。不動産会社や売主の多くはとにかく売りたいと考えているわけですが、買主としては安心した上で買いたいですから、その安心するための材料として有効なサービスとなっているのです。

売買契約を締結する前に実施しておき、その結果の概要を不動産会社が重要事項説明書に明記して説明することになっています。

2-2.国交省の告示で調査基準が決まっている

建物状況調査の内容等は国土交通省の告示で示されていることは前述のとおりです。調査内容やある程度の判断基準、調査する人のこと(資格)が示されている内容です。

ただ、調査項目は最小限のものにとどめられており、実際には存在する不具合や劣化事象でもこの基準の対象になっていないものも多いため、買主にも売主にも報告されないことがよくあります。現地で実際に調査を行った者が気づいている不具合などの症状があっても、基準にないことは黙っていることが多いという問題点があります。

せっかく調査するのであれば、最小限だけではなく、幅広く診断してほしいものです。

2-3.売主も買主も利用できる

これもすでに述べていることですが、建物状況調査は売主でも買主でも依頼することができます。以前は、買主が購入判断などのために自主的に依頼することが主流でしたが、2018年4月に施行された法改正の影響で売主が依頼して買主へのアピール材料とすることが相当に増えました。

しかし、売主が依頼しているサービスは、最小限の範囲の調査(建物状況調査)であるため、買主が別途で住宅診断(ホームインスペクション)を依頼するケースも増えています。これは、売主と買主では利害が対立することや、売主が依頼する調査(建物状況調査)では買主が不安を抱えていることなどが影響しています。

2-4.建物状況調査(住宅診断・インスペクション)は実施が必須ではない

建物状況調査(住宅診断・インスペクション)について、よく誤解されていることがあります。中古住宅の売買に際しては建物状況調査を実施しなければならない、つまり実施することが義務だと考えている人がいるようです。

一部のニュースで、住宅診断(ホームインスペクション)が義務化されたと報道されたことがあるために、このような誤解を生んでいるようです。

実際には、住宅診断(ホームインスペクション)の実施を義務付けたのではなく、住宅診断(ホームインスペクション)のことを売主や買主へ説明することや、利用を希望するかどうか確認することなどが義務付けられたのです。

つまり、利用するかどうかは売主や買主の自由なのです。たとえば、買主が希望したとしても売主が拒否することもできます(所有者が拒否すれば実施できません)。もちろん、これだけ住宅診断(ホームインスペクション)の利用が普及している状況下において拒否する売主がいるとすれば、買主にとってはリスクが高いと感じますし、何か問題があると考える人は多いです。

そういった物件は実際に大きな瑕疵を抱えていることも多いです(購入後に依頼した診断で発覚している)。

ちなみに、義務化されたのは建物状況調査のことであり、これに該当しない住宅診断(ホームインスペクション)のことまで説明する必要はありません。そのため、建物状況調査と住宅診断(ホームインスペクション)の違いなどについて説明を受けるチャンスは売主も買主も少ないです。

そもそも説明する不動産会社もこの違いを理解できていないことが多いです。

2-5.買主なら最低ラインの調査では不十分なので要注意

ここまで読んできたら分かっている人も多いと思いますが、買主の立場から考えれば、最低ラインの調査(建物状況調査のみ)では買主が本来ならば知っておきたい調査結果を全て知ることができないため、建物状況調査だけでは不十分です。

購入したい物件に関して、売主や不動産会社から建物状況調査の結果が示されたとしても、調査していない重要な項目があること、緩い基準で判断されている項目があることを考えて、自分自身で住宅診断(ホームインスペクション)の依頼を検討するようにしましょう。

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