新築住宅の契約をした後や完成した後、引渡しの前には、内覧会が実施されます。売主や建築業者、もしくは仲介業者から、「内覧会は○月○日にしますよ」と言われたとき、「え!内覧会って何ですか?」となる人も多いです。
内覧会とは言わず、単に引渡し前の立会いなどと言うこともありますが、いずれにしても住宅購入に慣れていない人にはわかりづらいですね。
ここでは、新築住宅(一戸建てもマンションも)を購入した人を対象として、住宅購入で失敗しないために買主が知っておくべき内覧会の基礎知識や注意点、そして内覧会に同行する専門家の選び方を解説します。
1.内覧会(=住宅の完成検査・施主検査)の基礎知識と注意点
最初に内覧会に関する基礎知識と基本的な注意点を把握しておきましょう。これがわかっていないと、引渡しを受けた後に公開する可能性は高いですから、しっかり読んでおいてください。
1-1.内覧会とは完成検査・施主検査・立会い日
内覧会とは、購入した住宅のチェックをする大事な機会のことで、完成検査や施主検査、竣工検査などと呼ばれることもありますし、立会い日や確認日などと呼ばれることもあります。呼び名は会社や人によって異なりますが、これらは基本的にほぼ同じ意味で使われている言葉です。
1-2.不具合の有無や契約通りかチェックする重要な機会
それでは、この内覧会でチェックするのは何でしょうか。ここがわかっていないと後で後悔することになります。
それは、契約した通りの住宅であるか確認することと、建物などに不具合がないか確認することです。要するに、自分の買った住宅の引渡しを受ける前に、問題ない物件であるかどうかチェックするわけです。このチェックの後に代金を全て支払ってから引渡しを受けるため、非常に重要な意味があるのです。
例えば、建物に施工不良が見つかれば、それを補修してもらわないといけないですよね。そういったことを内覧会でチェックするわけです。
1-3.必ず引渡し前に実施すべき
内覧会にはいくつか非常に重要な注意点がありますが、その1つが内覧会の実施時期です。完成状態をチェックするわけですから、建物が完成した後に実施するのは当然のことですが、必ず、引渡しを受ける前に実施するようにしてください。
通常、引渡しの際には残代金の支払いを行いますが、全額支払った後に内覧会を実施しても補修等の対応をきちんとしてもらえないリスクがあるからです。また、完成した住宅の引渡しを受けなければなりませんから、完成状態を内覧会で確認しておく必要があるのも当然ですね。
なかには、建物や外構の一部が未完成状態であるにも関わらず、売主から買主へ引渡してしまおうとする業者もいますが、そのような業者の言いなりにならないよう注意してください。以下が、引渡し前の正しい流れです。
上の通りの順で取引を進めてもらえない場合は、専門家に相談した方がよいでしょう。
1-4.内覧会日と引渡し日の間は1週間以上あける
内覧会の実施日と引渡し日の期間設定も重要です。内覧会では、補修すべき点などを指摘するわけですから、その後に補修工事が生じることが多いです。専門家が同行して代わりにチェックしているケースでは、何も補修工事が発生しないことは少ないです。つまり、多くの住宅で補修工事(手直し工事)が必要だと判断されています。
この補修工事も引渡し前に完了してもらう必要がありますが、工事の所要日数のことを考えれば、内覧会日と引渡し日の間にはゆとりを設けたいものです。どれだけの工事が生じるかは内覧会でチェックしてみるまでわかりませんから、最低でも1週間以上の期間をあけておくことをお勧めします。
結果的に、1日や2日で補修できるケースも多いですが、数日を要する場合もあります。補修工事の規模や建築業者による職人等の手配次第ではもっと日数がかかる可能性もあるのです。
1-5.売主や建築業者が内覧会をしないこともある
もう1つ非常に重要な注意点があります。新築住宅の契約をしたにも関わらず、売主や建築業者から買主や施主に対して内覧会の実施を案内しないことがあるのです。つまり、内覧会をしないで引渡そうとするわけですから、お届きます。
しかし、現実にそういった業者は少なからず存在しますから、引渡し前の内覧会を実施してもらえるかどうか、契約前に質問しておきましょう。そして、万一、内覧会の予定がないと言われれば、実施してもらうように強く要望しなければなりません。ここは、遠慮してはいけないところです。
2.引渡し前の内覧会と専門家の同行・立会いサービス
内覧会では契約通りの完成状態であるか、施工品質に問題ないか(不具合がないか)確認する機会であることは既に述べた通りですが、このうち施工品質のチェックは建築知識や経験がない人には困難です。そこで役立つサービスが専門会の同行・立会いですが、これについて解説します。
2-1.専門家の同行・立会いサービスとは?
建築知識や経験もないのに、建物完成状態を自分でチェックしようとしても無理があるのは明白です。しかし、高価な買い物ですし、引渡し後や数年後に不具合に気づいても対応してもらえないことも多いですから、引渡し前に何とかしておかなければなりません。
そこで、専門家に依頼しようというわけです。
買主や施主に代わって、消費者サイドの立場で完成状態をチェックしてもらうことで、補修すべき点を洗い出ししてもらうことができる便利なサービスです。
2-2.専門家が内覧会に同行するメリット
専門家が同行するメリットはいくつかありますので、以下に箇条書きで紹介します。
- 補修すべき箇所を自分に代わって挙げてくれる
- 不足する建築知識や経験を補ってくれる
- 売主や建築業者に誤魔化されない
- 買主が安心できる
実際に専門家のサービスを利用した人が感じることの多いメリットは、このなかでも、「売主や建築業者に誤魔化されない」という点です。
買主が自ら指摘しても、売主や建築業者は「それは許容範囲です」「そのようなものです」などと説明を受けることが非常に多いです。これが本当のこともあれば、誤魔化しているだけということも非常に多いですが、一般の人にはその判断ができないために、強く補修を求めることができなくなってしまいます。
しかし、専門家が同行していることで、そのような誤魔化しがあってもすぐに指摘してもらえるし、説明が事実であればそのように解説してもらうこともできるので納得できます。内覧会に関する不安を解消してもらえるのは大きなメリットです。
2-3.専門家が内覧会に同行するデメリット
内覧会に専門家を同行するデメリットもあります。
最大のデメリットは、やはりコストがかかるということです。物件の所在地や大きさ(面積)、依頼する調査内容などによりますが、5~13万円程度の費用がかかります。ただ、住宅の購入費用とそれによって負っているリスクのことを考えれば、それほど高い金額でもありません。リスク抑制のために考えてみるとよいでしょう。
もう1つのデメリットとして、売主や建築業者への気遣いがあります。「疑っているようで悪いかも」という意見を聞くこともありますが、そもそも内覧会はそういう機会です。そのためにチェックする場を設けているわけで、それを自分だけではできないから専門家を同行するのであって何もおかしなことではありません。
また、専門会に同行依頼する人は多いですから、それほど気にするようなことでもありません。
3.一戸建てとマンションの内覧会の相違点
内覧会の対象は一戸建てとマンションの両方です。分譲マンションでも、建売住宅でも注文建築の家でも実施されています。しかし、一戸建てとマンションでは確認できることに大きな違いがあるため、この点は理解しておきましょう。
3-1.マンション内覧会で確認できること
マンションでは、完成時点に確認できる範囲は、室内の内装仕上げと設備の動作チェック、ユニットバスの天井点検口内部、専用使用できる共用部の仕上げに限られます。専用使用できる共用部とは、バルコニーや玄関ポーチなどのことです。
建物全体の外壁、共用廊下、共用階段、共用設備などは対象外です。こういった個所は、各住戸の所有者が無理に指摘して建築業者とトラブルになるようなことがあれば、入居後の管理組合活動などで問題となることもあるため、十分に注意しましょう。
3-2.一戸建て内覧会で確認できること
一戸建てでは、現地で目視できる範囲は全てチェック対象とすることができます。外壁や基礎、室内の壁・床・天井・設備・点検口の内部まで全てが対象ですから、広範囲に確認することができます。
とはいえば、何でも確認できるわけでもありません。例えば、壁内部や基礎内部までへ目視できないですね。隠れて見えないところは、建築中に検査することでチェックできたのですが、既に完成しているならば、床下や屋根裏の内部も含めて確認できる範囲だけでも全てチェックしておいた方がよいでしょう。
3-3.マンションより一戸建ての内覧会こそ重要性が高い
上で説明したように、マンションでは確認できる範囲が限定的なものとなりますが、一戸建ては外壁や基礎、床下や屋根裏の内部などの重要な箇所まで確認できることから、内覧会で専門家に依頼してチェックするだけの価値が十分にあると言えます。
もちろん、マンションでも同行依頼する人は多いですが、一戸建ての方が遥かに多いです。内覧会は引渡し前のせっかくの機会ですから、自分でやる場合でも詳細まできちんと確認しましょう。
4.内覧会に同行依頼する業者(住宅インスペクター)の選び方
内覧会への同行依頼をする人は多いですが、多くの人によって住宅購入が初めてですから、依頼する業者(住宅インスペクター)を選ぶのも初めてです。慣れない業者選びですから、ここで抑えておきたい選び方のポイントを解説します。
4-1.建築士の資格は必要最低限
内覧会同行・立会いで建物のチェックをするのに最適の資格というのは明確にはありません。様々な建築系の資格があるものの、実務能力を伴うものはないのが現状です。ただ、建築知識や経験が必要なのは間違いなく、その知識と経験の習得のために必要な資格は建築士です。
建築士ならば、建物の設計や工事監理の経験を積むことができるため、その経験の一部は内覧会同行サービスに活用することができます。
但し、建築士ならば安心というわけではなく、あくまでも必要最低限のものであることを理解しておきましょう。
4-2.経験と実績
建物の施工品質をチェックする上で大事なのは、経験・実績です。内覧会にどれくらい同行したのかという点だけではなく、住宅が建築される過程にどれだけ関わってきたかも大事なポイントです。それが、現場管理や工事監理です。
木造住宅の内覧会に同行してもらうならば、木造の建築中の監理経験が十分にあることが大事なのです。設計は数多くしているものの、現場経験が不足する人もいますから注意しましょう。
4-3.マニュアルやチェックリストの整備
内覧会同行や住宅診断(ホームインスペクション)業務をするに際して、きちんとマニュアルやチェックリストが整備されているかどうかも大事なポイントです。担当者の勘だけに頼っているようでは心配です。チェック漏れがおこることもありうるし、迷った時の判断材料も大事だからです。
マニュアルやチェックリストが整備されているかどうかは、業者からヒアリングするべきです。
4-4.報告書の質
非常に大事なことの1つが、調査後に作成し提出される報告書の質です。報告書の作成は大変手間のかかる作業ですから、多くの同行業者が簡易なもので済ませがちです。後々の証拠として残る大事な書類にも関わらず、簡単なもので済ましてしまうことはあまりお勧めできません。
特に一戸建てでは床下や屋根裏といった普段は目につかない箇所の調査をすることも多いですから、報告書の質・量は非常に重要です。依頼する前に報告書のサンプルを見せてもらって確認することは必須です。
4-5.最低5人以上(できれば10人以上)の組織であること
最後に抑えておきたい業者選びのポイントを紹介します。それは、その業者が少人数でないことです。経験がものをいう業務であることは間違いありませんが、2~3人でやっていると間違った判断・見解のままで多くの住宅を調査しているケースもあります。
時代の変化についていけていないこともありますし、調査項目が明らかに不足していることもあります。
多くの経験と意見を集めることで、内覧会同行・立会いサービスの品質が高まっていくことは間違いないので、その業者に属する専門家の人数には注意しましょう。どんなに少なくとも5人以上、できれば10人以上の組織で運営していることが望ましいです。
また、建設会社で勤務しながら、アルバイト感覚で名前を隠して同行・立会いサービスをしている人も少なくないので、ホームページに写真と氏名を開示しているかどうかもきちんと確認してください。本当の第三者の立場でサービス提供するならば、堂々と氏名も顔写真も公開できるはずです。
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