住宅診断(ホームインスペクション)は一生に何度も利用するものではありません。多くの人にとって初めて依頼することでしょう。初めて依頼するだけに、実際にプロが何を見て診断しているのか、どのような不具合を指摘しているのか想像しづらいのではないでしょうか。
そこで、プロが現場で指摘した不具合や劣化事象の事例を写真付きで紹介します。プロに依頼することで見つけてもらったり、アドバイスしてもらったりすることの一部ですが、良い参考になるでしょう。
1.雨漏り痕・雨漏り被害
プロの住宅診断(ホームインスペクション)では、雨漏り被害が見つかることは多いです。多くの場合、中古住宅で確認されることですが、新築住宅でも完成した直後から雨漏りしているケースが見つかることもあります。
上の写真は収納内部で天井を見たところです。
天井材に染みがついているのがわかりますね。
上の写真は壁と天井の取り合いのところに染みがある様子です。
室内の壁ですから簡単に気付くように思いが位置ですが、一般の人は意外と見落としがちで、説明を受けてから「知らなかった」という声を聞くことは多いです。見学するときに、目線を上にあげてまで見ていないことが多いからです。
この上の写真は屋根裏を覗いたところで見つかった雨漏り痕です。
屋根材の下側に位置する木材(野地板)に染みがあるのがわかりますね。そして、その下にある断熱材に雨水が垂れていたのか、断熱材が黒ずんで劣化している状況です。
雨漏り痕が見つかったときは、被害箇所が見えているところだけとは限らないと考えておきましょう。たとえば、壁内に雨水が周っていて見えないところまで腐食していることもあるからです。
2.外壁や基礎の貫通部
プロの住宅診断(ホームインスペクション)でよく指摘があがることの1つに、外壁や基礎の貫通部に関することがあります。これは、新築でも中古住宅でもよくあがるものですから、住宅購入時やメンテナンスを考えるときには注意してください。
上の写真は外壁の貫通部に配管されている様子です。エアコンの配管の状況ですが、配管の周りに明らかに隙間があるのがわかりますね。ここから、雨水が壁内へ入っていきますが、さらには室内側へ漏っていく可能性もあります。
この写真は極端に隙間が空いているのでわかりやすいですが、もっと小さな隙間のケースが多いので注意して確認しなければなりません。
中古住宅では、エアコン配管を撤去した後のスリーブを埋めずにそのままにしている住宅を見かけることもありますが、雨漏り被害のリスクが高いと考えておきましょう。
この写真は基礎を配管が貫通している箇所の様子です。
よく見てみると配管周りに隙間があることがわかりますね。これも雨水が入っていくことが多いので注意しなければなりません。
基礎立上りの低い位置にこういった隙間がある場合、最近は豪雨により敷地内に水溜りができることも多いので、僅かな隙間から雨水が床下へ浸水してしまう事例がいくつも確認されています。すぐに床下浸水に気づけば被害が大きくならずによいのですが、長期間、気付かなかった場合には床下環境が悪くなりカビや腐食で大変なことになっている住宅もあります。
外壁も基礎も貫通部分の周りの隙間には十分に注意したいものです。
3.床下の漏水
基礎の貫通部から床下に浸水することがあると書きましたが、実際に床下で水溜りが見つかることは少なくありません。床下の調査のために、点検口をあけて覗いてみたら、大量の水が溜まっていたことは何度もあります。点検口から見ただけではわからない位置まで潜って進んでいくと、奥の方に水溜りができていたケースもよくあります。
床下の漏水には様々な原因があり、基礎の貫通部から雨水が浸入してきたケース、基礎の打ち継ぎ部から浸水してきたケース、給排水管から漏水したケースなどです。また、著しい結露が床下で発生していた事例もあります。
施工不具合や著しい劣化、さらにはプラン上の問題などによるものです。
床下の確認はできれば、点検口から覗くだけではなく、奥まで進入して調査することをお勧めします。
4.そのほかの指摘事例
他にも様々な指摘事例が挙げられますが、いくつかまとめてご紹介しましょう。
この写真は玄関ポーチでタイルの浮きを調査している様子です。タイルの施工が雑だった場合、浮いていることがよくあります。しかし、その浮きは目視だけではわかりません。プロは打診棒で軽く叩くか、転がるようにして音の確認をします。
浮いているところと正常なところでは音が異なりますので、意識してよく聞いておれば、わかる人も多いでしょう。
上の写真は屋根裏の様子です。これを見ただけで問題点がわかる人はほとんどいないと思いますが、実は必要とされている石膏ボードが施工されていない状況です。
そもそも、どこに石膏ボードが必要なのか判断するのはプロでないと難しいですが、建築確認申請書を見て石膏ボードが必要かどうかを判断し、必要なのに施工されていなければ指摘することになります。これは新築住宅でよく確認される施工ミスです。
上の写真は基礎の底盤、つまり基礎の底の部分です。この箇所は床下ですので、床下点検口を開けて確認することになります。基礎のひび割れは立上りにも底盤にも発生することがありますが、底盤の方がより心配される症状であることが多いです(立上りにも重大なひび割れはある)。
ひび割れがあれば、その位置・方向・サイズ・関連性のある他の症状などを考慮して、その重大さを検討しなければなりません。
最後にご紹介するのは、床や壁の傾きです。
写真にある機材を用いて床や壁の傾斜を測定します。この現場では床に許容範囲を超える傾斜が確認されました。
傾斜が少々大きい場合でも局所的なもので、基本構造部に影響がないものであれば、それほど心配する必要はありませんが、確認される範囲や角度によっては補修等の対応を考えた方がよい場合もあります。もちろん、ひどい場合には購入中止を考えるべきこともあります。
新築住宅であれば、局所的なものでも傾斜が大きいならば補修を求めたいところです。それだけ新築工事の精度が低いということですからね。
ここまでに、雨漏りや外壁・基礎の貫通部、屋根裏の石膏ボード、床下の漏水などについてあげてきましたが、これらはあくまでも指摘事例の一部です。現場では本当にいろいろな指摘があがるものです。住宅の不具合や著しい劣化への対処は早いほどよいのですが、購入時に診断していないようであれば、後からでも検討してみてはいかがでしょうか。