購入希望の住宅を見学しているときに、建物の一部で何らかの染みに気づくことがあります。天井や壁、収納のなかを何となく見ていても気づくことがありますし、専門家に住宅診断(ホームインスペクション)を依頼することで見つかることもあります。
一般の買主がほとんど見ることのない屋根裏を専門家に診断してもらったら、シミが見つかったというケースも多いので、屋根裏は見ておいたほうがよいでしょう。
ところで、住宅購入前、つまり売買契約をする前に建物に染みを見つけた場合、どのように対処すればよいのでしょうか。雨漏りなら見えない部分(壁の中など)で構造部が腐っているなんて可能性もあるわけですから、慎重に対応したいものです。
1.水染みの6つの原因
水染みが見つかったときの対応方法を検討するために、まずは水染みの原因となりうることにどのような原因がありうるのか知っておく必要があります。染みがあれば、全て危ないというわけではないので、まずは個々から押さえておきましょう。
1-1.雨漏りの染み
染みの原因の代表的なものが雨漏りです。建物の内部に何らかのルートで雨水が浸入してきてしまい、天井や壁などに染みとなって現れたものですが、これは雨漏りが止まっているか知りたいと同時に、内部の目視できない箇所の状態が心配されます。
1-2.設備からの漏水
2つ目が設備からの漏水です。住宅には、キッチン・トイレ・洗面・浴室などの水周り設備がありますが、これらの配管周り(給水管・給湯管・排水管などとそれ他の接続部を含む)から漏水するトラブルは日常的に起きていますから、どの住宅にでもありうることです。エアコン配管からの漏水という事例もあります。
雨漏り同様に、被害状況によっては見えない壁の中や床下、天井裏などで大きな問題が発生していることがあります。
1-3.結露の染み
染みの原因としてよくあがることの1つに結露があります。結露といえば、冬の窓ガラスに付着している水滴を思い浮かべる人が多いですが、窓ガラス以外の箇所にも結露が生じることがあります。天井の染みが雨漏りだと思って調査依頼してみると結露だったということは本当に多い事例です。
結露も発生箇所や程度によっては建物の受けるダメージが大きく、構造体の腐食・カビをもたらしていることがあるので要注意です。
1-4.小動物の糞尿
ここからは、それほど大きな問題ではない染みの原因です。住宅の屋根裏や床下には小動物が潜んでいることがよくあります。たとえば、ネズミやハクビシンなどです。天井の染みが気になって調べていみたら、屋根裏に小動物が住んでいたというケースはよく耳にします。
建物にとって大きな問題ではないとはいえ、自宅に小動物が住んでいるのも好ましくないですね。
1-5.居住者の生活によるもの
住宅には人が暮らしているわけですから、普通に生活していくなかでも染みがつくことはよくあるものです。飲み物をこぼす、水の入ったバケツをひっくり返す、雨の日に窓を開けっぱなしにしている、などというケースです。
こういったものが壁や窓枠についていると雨漏りや結露の可能性も考えることになり、その場所や状況によっては意外と判断が困難なこともあります。特に窓枠の染みは、結露も雨漏りの可能性も考えられるケースが多くて少し厄介です。
1-6.新築工事途中の染み
屋根裏や天井裏を調査したときに、部材の染みが見つかることがあります。雨漏りや結露の可能性を検討するわけですが、実は新築工事途中の雨で濡れた染みがついていたということもあります。継続している雨漏りではなく、新築時のものであるならば、乾燥していて腐食などの被害もなければ気にすることではありません。
2.住宅購入前に水染みの原因特定は困難
6つの代表的に水染みの原因についてあげてきましたが、その住宅を買うかどうか検討している人にとっては、原因をはっきりさせてから判断したいのではないでしょうか。また、雨漏りや結露、設備配管からの漏水ならば、できれば被害範囲も確認したいところです。
しかし、住宅購入前の段階では、原因を特定したり被害範囲を確認したりすることは容易ではありません(ほとんどできないです)。その理由は、原因特定等のためには、通常の住宅診断(ホームインスペクション)を実施するだけでは不十分なことが一般的であり、より専門的な調査(例えば部分的に破壊調査を行う等)が必要になるからです。
水染みの原因特定が困難なケースにおいて、買主はどう対応すればよいのでしょうか。
2-1.不動産業者の説明を鵜呑みにしない
最も注意することは、不動産業者の説明を鵜呑みにしないということです。責任感のある誠実な営業担当者ならば、ここでいい加減な説明をすることはありませんが、それはつまり、「染みのはっきりした原因はわかりません」という説明になるはずです。
事前に売主の方で専門的な原因調査をしているのであれば、口頭による説明ではなく、その資料を提示してもらうべきです。
営業担当者が「たいしたことないですよ」「よくあることで気にしなくていい」などと簡単に発言することがありますが、根拠のないことを信用しないことです。
2-2.売主の説明は参考程度に
売主は、長く暮らしてきた自宅のことですから、シミの原因を知っていることもあります。たとえば、原因が「1-5.居住者の生活によるもの」であるならば、明確に説明できることも多いでしょう。
また、「何年か前に雨漏りしたけど補修して、それ以来は漏っていない」と説明を受けることもありますが、これは事実確認ができるときとできないときがありますから要注意です。雨漏りは補修工事が不適切で再発する事例が多いことを理解しておいてください。
そのときの雨漏り調査や補修工事の資料があり、その内容が適切なものであるならばよいですが、何も資料がない場合は参考とする程度にした方が無難です。
2-3.住宅診断で専門家の意見を参考に
住宅購入時に第三者の専門家による住宅診断(ホームインスペクション)を依頼することが、今では当たり前になっていますが、このときに診断した専門家の意見を聞いてみましょう。シミの原因について容易に判断できることならば、意見をもらえることがあります。
但し、前述したように専門的な調査(例えば部分的に破壊調査を行う等)をしない限りは断定的なことは言えない、もしくは全く判断できないということが多いことは理解しておきましょう。それでも、複数の原因予測を聞ける場合もあります(症状・建物形状・仕様・資料の有無と内容などによる)。
2-4.補修工事履歴を資料で確認できれば良い参考に
「2-2.売主の説明は参考程度に」で述べたように調査や補修工事の資料があれば、それが良い参考になることがあります。そういった資料がないか不動産業者を介して売主に聞いてみましょう。そして、それが提出されたならば、一度、住宅診断(ホームインスペクション)を行う専門家に診てもらって相談するとよい意見が聞けることもあります。
建物に現れた水染みは、ちょっとしたものであっても、見えない箇所では重大な問題を引き起こしていることもありますから、物件見学の際は十分に注意して染みの有無を確認するようにしてください。
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