住宅の耐震性を心配するとき、主要な構造部分を留める金物の重要性をについて理解しなければなりません。日本では、大地震があるたびに耐震性、主要構造に対する法規が強化されてきましたが、その過程で建築業界の人たちは金物の重要性を強く認識してきました。
このように大事な構造金物ですが、ここでは構造部の金物と住宅診断の考え方についてご紹介します。
1.新築と中古で異なる構造金物に関する住宅診断
住宅診断を簡単に説明するならば、新築住宅においては施工品質をチェックし、中古住宅においては劣化具合をチェックするものです。主要構造部の金物も建物に使われているものですから、診断の対象となるものですね。
1-1.新築住宅の住宅診断における構造金物のチェック
住宅診断は新築住宅でも数多く利用されていますが、新築物件で構造金物をチェックするとき、設計図の通りに金物が配置されているかどうかという点とその金物の取り付け状況に問題が無いかどうかという点を確認します。
〇設計図の通りに金物が設置されているか
設計図の通りであることは重要です。構造上の安全性を考慮して設計されているはずですが、その図面通りに金物を設置していなければ、設計で求めているだけの耐震性を発揮できない可能性があるからです。現場で大工の判断で勝手に変更するなどということは原則、認められません。
そもそも図面通りに施工するだけだから、ミスなど怒らないと考える人もいますが、建築中に住宅検査に入ると様々なミスが見つかります。設置すべき金物を設置し忘れることもあれば、金物の種類を間違っていることもありますし、また設置位置を間違っていることまであります。
〇金物の取り付け状況に問題ないか
次に金物の取り付け状況です。これは、必要な箇所に必要な金物が設置されているものの、設置の仕方に問題があるというものです。簡単にいえば、金物が緩んでいて効いていない状況がないかを確認するものです。
住宅診断では、これに該当する指摘があがることもあります。ただ、前述の設計図の通りに金物が設置されていない指摘事例の方が多いというのがアネストの実績からわかっています。
1-2.中古住宅の住宅診断における構造金物のチェック
中古住宅で住宅診断を行う場合は、金物が使用されているかどうかという点と、使用されている金物の設置状況に問題がないかという点をチェックすることになります。
〇金物が使用されているか確認する
構造金物は昔からずっと使用されてきたものではありません。耐震への考えが変わっていくなかで使用が求められるようになったため、対象建物の築年によっては使用されていないということはよくあります。
耐震性を考えれば、金物を使用していることが好ましいため、金物が使用されていない住宅であれば、その耐震性は心配されるものです。
住宅診断では、建物の建築時期と比較して一般的には金物が使用されていない時期のものであるならば、この点も依頼者に説明しつつ、耐震性の確認(耐震診断)やその結果次第では耐震補強の検討をお勧めすることになります。住宅診断の結果だけをもって、こういった物件をダメな物件だと決めつけるわけではありません。
住宅診断と耐震診断が異なるので、ここも理解しておく方がいいですね。
〇使用されている金物の設置状況に問題がないか
中古住宅で金物が使用されている場合には、その金物の設置状況をチェックしていきます。時間の経過とともに金物が緩んできていることもありますし、木部が痩せたり劣化したりしてしまって緩んでいることもあります。
ぱっと見て金物が付いているから大丈夫だな、と単純に判断するわけではないですね。
2.新築と中古住宅で異なる筋交いの留め方
新築住宅と中古住宅では、前述のように金物に対する診断の考えが少し異なりますが、現場で住宅を見るときには何を見ればよいか解説するため、筋交いの留め方の事例写真を挙げて説明します。
上の写真は、築30年を超える木造在来工法の住宅の筋交いの端部です。釘で留められているのがわかるでしょうか?その時代は、筋交いが釘止めされることがまだまだ多かったのです。2000年以降に新築された住宅では、金物が使用されているのですが、それ以前は違ったのです。
1995年の阪神・淡路大震災による建物の被害が大きく影響して、法改正があったからです。
この写真は、接合金物で筋交いを留めているものです。金物の種類はいろいろあるので、この写真と同一でなければならないというものではありません。
新築住宅を購入するのであれば、釘止めはありませんが、2000年頃から以前の建築された中古住宅を購入するのであれば、点検口から上の写真のように接合金物が使用されているかどうか確認したいものですね。
○関連サービス