住宅診断(ホームインスペクション)の1つに新築住宅の竣工検査(完成検査・施主検査)に第三者が立会って検査するというものがあります。竣工検査立会いや内覧会同行などといった名称で呼ばれているサービスですが、なぜ新築住宅でも住宅診断が必要だとされているのでしょうか。
今回のコラムで新築住宅の竣工検査に関する必要な知識を身につけて、竣工検査や手直し工事などについて適切に対応してから引渡しを受けることで、住宅購入で失敗しないようにしましょう。
1.竣工検査(完成検査・施主検査)とは?
新築住宅の竣工検査とは、建物の工事が完了して完成した段階で施工品質や施工ミスの有無をチェックすることです。
完成状態の建売住宅を契約した人であれば、契約後速やかに竣工検査を行いますし、未完成状態の建売住宅を契約した人や注文住宅を契約した人であれば、建物が完成してから竣工検査を行います。
竣工検査は完成検査と呼ばれることもありますが、注文住宅においては注文者が行う検査を施主検査とも呼んでいます。
2.新築住宅なのに施工不良がある
竣工検査では、施工品質や施工ミスの有無をチェックすると述べましたが、今どきの新築住宅でも施工ミスなどの問題があるのでしょうか。
不動産会社や建築業者からは、「昔と違って最近の住宅では欠陥住宅なんてありません」「第三者機関が建築中に検査に入っているから大丈夫だ」と説明を受けている人が多く、買主側で住宅診断を入れる必要性まではないだろうと考えていることもあります。
しかし、住宅業界の現実として、まだまだ買主側が住宅診断を利用する必要性はあります。今でも施工ミスなどの問題は多発しており、なかなか施工ミスや欠陥住宅の問題はなくなっていないのです。
その証として、公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センターに対する新地住宅の不具合等の相談件数は減っていないことが、同組織からデータが公表されています。
3.新築住宅の施工ミス・不具合の事例
それでは、実際にどのような施工ミスや不具合の事例があるのでしょうか。2003年より住宅診断を行っている住宅コンサルティングのアネストが診断してきた事例をいくつか挙げてみましょう。
3-1.基礎の穴
以下は基礎コンクリートの外側の写真です。基礎に穴が開いているのがわかりますね。
穴があるために強度に問題があるという指摘ではありません。建築途中で基礎内側に溜まった雨水を排出するためにこのような穴を設けておくことはよくあることです。しかし、このまま放置していると、逆に建物外部から雨水が基礎内側(=床下)へ浸水してしまうためにモルタルで塞いでおく必要があります。
別の住宅では、この穴が地面すれすれにあり、且つ地面の仕上げが土間コンクリートであったために、より雨水が侵入しやすい状態でした。床下への浸水は、カビの繁殖や土台など木部の腐食、場合によっては鉄筋の錆などにつながりますから、すぐに対処が必要です。
3-2.断熱材の欠損
新築住宅の住宅診断で最もよく指摘事項として挙がるのが断熱材の施工不良です。以下は床下の写真ですが、必要な箇所に断熱材がありません。
この写真は床下側から床下点検口の周りを写したものです。点検口周囲の床下面に断熱材が施工されておらず、断熱性能の低下を招いてしまっています。新築時点で断熱材を設置し忘れていたわけですが、住宅によっては床下面に設置していた断熱材が落下しているケースも多いです。
床下点検口周りは点検口から覗いて確認することができますが、床下の奥までは見えないため、できれば奥まで潜ってもらって確認を求めた方がよいでしょう。
3-3.タイルの浮き
新築住宅の住宅診断で指摘の多い事例としては、タイルの浮きも代表的なものだと言えます。玄関や玄関ポーチなどにはタイルが使用されていることが多いですね。
上は玄関ポーチのタイルの写真ですが、写真ではタイルの浮きはわかりづらいです。現地で目視してもタイルの浮きに気づくことはほとんどなく、写真に写っている打診棒を使用して調査することで発見することができるものです。
打診棒でタイルの表面を転がしてみると部分的に音の違いが確認されることがあり、これによってタイルの浮きを確認できるのです。
タイルが浮いていると、生活していくなかでちょっとしたことでタイルが割れてしまうことがあり、それから売主や建築業者に補修を求めても使い方の問題などとして補修対応してもらえないことが多いため、竣工検査で指摘しておくことが好ましいです。
仮にこの時点で補修対応してもらえない場合であっても、生活してから割れたときには売主や建築業者の負担で補修することを約束してもらっておくとよいでしょう。
3-4.ビスの設置状態
もう少し細かな指摘事例もあげておきましょう。細かな指摘とはいえ、大事なこともありますから疎かにできるわけではありません。
この写真中央付近にあるサッシのビスが少し浮いているのがわかるでしょうか。お子さんが触って怪我をする事例がありますし、こういった箇所が多いと取り付けが弱いわけですからきちんと締め付けてもらいましょう。
建物外部側のビスが緩んでいたり、ビスがなかったりする事例もよく確認されています。外部側は雨水が侵入する原因箇所になりますから、確認しておきたいポイントです。ちょっとしたビス穴からの雨漏りなんて大したことないと考えるかもしれませんが、そういった雨漏りで壁内の腐食やカビで住宅の寿命を縮めてしまった事例はいくつもあります。
3-5.外壁の貫通部の隙間
もう1つ大事な指摘事例をあげておきますが、これも新築住宅でよく見られるものです。
写真がアップすぎてわかりづらいでしょうか。これは外壁の貫通部分に配管されている様子です。
外壁の貫通部分にこういった隙間があると虫や雨水の侵入を許してしまうため、隙間をきちんと塞いでおく必要がありますが、これを忘れている現場は意外と多いです。
給湯器の近くにはこういった貫通部がありますから、一度確認しておきましょう。
4.第三者の専門家の立会いが効果的
「3.新築住宅の施工ミス・不具合の事例」では、新築住宅の住宅診断でよく見るかる指摘事例をあげていますが、他にも床下漏水や床の歪み、屋根裏や床下の金物の取付け忘れなどいろいろな事例が見つかっています。
こういったことを買主が自らチェックしていき、適切に補修を要求することは簡単ではありません。気になることを売主や建築業者へ告げても、「それは許容範囲だ」と言われてしまえば、その回答が事実であるかどうか判断することはできないでしょう。
竣工検査への立会いを第三者の専門家に依頼する人が多い理由はそこにあるのです。コストのかかることではありますが、長く住み続ける住宅に安心をプラスするために利用を検討してはいかがでしょうか。
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