中古住宅の売買に際してあった相談の事例です。
売主が不動産会社から社長個人に変わったときの注意点は?
インターネットで気になる中古住宅の広告を見て問合せして、現地を内見しました。その物件を案内してくれたのは仲介業者で、売主は別の不動産会社だと説明を受け、その社名も確認しました。
建物が築23年と古いこともあり、一級建築士にホームインスペクション(住宅診断)をしてもらったところ、あちこちに補修すべきと判断された点があったものの、その物件を気に入っていたので購入しようと考えていました。ただ、ホームインスペクション(住宅診断)で最も懸念材料とされた天井と壁の取り合いに部分にある染み痕が気になりましたが、売主からの説明は雨漏りを補修しているので大丈夫とのことでした。
ホームインスペクション(住宅診断)では、雨漏りが本当に止まっているかどうかは確認できないとのことでしたが、売主による補修したとの説明を信じて購入を決断しました。
そして、売買契約のときになって、契約名義が不動産会社ではなく不動産会社の社長個人名義になっていることに気づき、説明を求めたところ、元の所有者から社長が個人で購入したものを転売するので不動産会社として販売するのではないとのことでした。
登記事項証明書の名義は、元の所有者のままですが、この人と社長個人が売買契約を締結したという売買契約書の写しを見せてもらいました。
はじめは不動産会社が売主だと言っていたのに、社長個人に変わっていることが一番の驚きなのですが、雨漏りの話が出てから売主を会社から個人へ変更したようにも感じており、不信感があります。こういう場合、注意すべき点はありますか?
不信感をもったために、契約書に署名・捺印せずに延期して頂いています。
社長個人を売主にする最大の理由は瑕疵担保責任かもしれない
中古住宅の売主が不動産会社である場合と社長個人である場合の買主にとっての最大の違いは、売主の瑕疵担保責任でしょう。
不動産会社が売主である場合、引渡し日から2年間の瑕疵担保責任がつきます。2年より長くすることは可能ですが、一般的な取引では2年間と定めていることが非常に多いです。逆に2年より短く設定することは認められず、仮に短くするとその特約は無効となります。
一方で、不動産会社以外が売主である場合、売主の瑕疵担保責任は引渡し日から3カ月以下の期間で設定されることが非常に多く、免責(瑕疵担保責任を負わない)とすることもよくあります。3カ月より長く設定することも可能ですが、一般的にはこの期間で設定しています。
実際の瑕疵担保責任がどのようになっているのか、売買契約書で確認する必要があります。
また、売買の前に実施したホームインスペクション(住宅診断)で雨漏りの痕跡が見つかったようですが、売主はこれを補修したと説明していますね。これが本当かどうかわかりませんが、本当であったとしても補修が十分でなければ再発することもありますし、劣化による雨漏りであるならば、他の個所からも漏る可能性はあります。
つまり、売主としては、瑕疵担保責任を追及されてしまうリスクを考えている可能性はあります。
不審な売主への対応方法
実際の売主が不動産会社であるにもかかわらず、不動産会社ではないと偽ろうとしているのであれば、悪質な対応だと言えます。今回のケースでは、元の所有者から売主に名義変更する前に販売しているようですから、登記事項証明書(謄本)で売主の名義を確認できないですが、元の所有者との売買契約書で名義を確認できますね。
その結果が、社長個人の名義での契約とのことですから、一見、不動産会社ではないということになります。しかし、不動産会社でもないものが購入した中古住宅をすぐに転売するでしょうか。普通ではないことですから、これは不自然です。
元の所有者と不動産会社やその社長との関係がよくわかりませんが、売買契約書は民間同士の書面ですから関係次第では簡単に都合のよいものを用意できなくもありません。
契約書に捺印せずに延期したとのことですが、賢明な判断です。築23年の住宅では、雨漏り以外にも2年以内に新たな不具合が生じる可能性はありますから、引渡しから2年間の瑕疵担保責任をつけてもらう方向で交渉することを考えるとよいでしょう。
そして、何よりもそのような取引をしようとする売主を信頼してよいかの問題がありますが、これから長く住み続ける住宅を購入する相手としてはふさわしくないとも考えられますから、購入中止も視野にいれるとよいでしょう。